オールドスタイル・シャムのはなし−「育種」という考え方−

 
 


 
 
 
 

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 「育種」という考え方

about the pedigreeHow to become a good Owner

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日本においてOSS(オールドスタイル・シャム)が激減してしまった原因の一つとして、 「育種」という概念が希薄であった、ということが挙げられます。
 
 

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  一般に、犬や猫の品種というものは、 ショーへの出陳&評価によって、維持されています。 各々の猫団体が、独自の(共通の場合もある)スタンダードを保有し、 それに則ってブリーディングをすることを、ブリーダーさんに求めています。 ブリーダーさんたちは、自らが行ってきたブリーディングの成果を、ショーという公式の立場で評価される ことによって、それぞれが理想として掲げる猫に到達するために、更には、 大きな意味でのその品種の発展と存続のために、貢献していらっしゃいます。
 
  本来はこれがブリーディングの正道なのですが、人間ですので、やはり名誉欲や金銭欲、権力、競争心、流行など、 あらゆる目先の欲望や利益、そして時流に振り回されてしまう人々や、各々の場合も、多々あるようです。 これは、ショー・ブリーダーさんのみならず、審査員(ジャッジ)にも言えることであり、 時として、品種のスタンダードを変えてしまうことも可能なくらい大きな力となってしまいます。 このことは、シャム猫の場合にも当てはまりましたし、他の多くの猫や犬にも起こっていることです。
 
  当初は、健康増進の目的においてのブリーディングだったはずが、どこかの時点で、 理想の姿を追求するという目的に入れ替わってしまったということもあったかも知れません。
 
  とは言っても、やはり、 ショーやブリーディングに携わる方々がいらっしゃらないと、 犬や猫でも、その品種を存続させることは難しいと言って良いでしょう。 全くの自然に任せていれば、 雑種強勢という自然の法則に則って、いずれは全ての品種が統合され、 品種としての概念や特徴は消え去ってしまいます。 また、その品種の規模そのものが縮小してしまうと、近親交配が増えてくるなどの 弊害も出てきますので、その品種自体を健全に存続させることが、より困難になります。 このOSS(オールドスタイル・シャム)を始め、柴犬などもその良い例です。
 
  1900代初期〜70年代、 世界的なシャム猫の大流行の後、 それぞれの国の猫たちへの、シャム猫の遺伝子(被毛の色など)の流出は、 日本だけではなく、ペット先進国の欧米諸国でも起こりました。 その間、2回の世界大戦を挟み、シャム猫は一旦数を減らしましたが、 世界中に散らばっていたこともあって、 辛うじて絶滅を免れることが出来ました。
 
  その後、海外では、1980年代に行われたスタンダードの改変のために、 OSS(オールドスタイル・シャム)の価値や人気が、ショー・ブリーダー間で大暴落する、という事態となりました。 スタンダードとは言っても、絶対性はなく、やはり時流に乗ってしまうものなのです。 一旦スタンダードが改変されてしまえば、 ブリーダーたちはそれに則ってブリーディングをしないと良い評価をされないので、 自然とスタンダードにそぐわない猫たちの数は減少していきます。
 
  しかし欧米では、幸いなことに、スタンダードの改変の後でも、 地道にOSS(オールドスタイル・シャム)のブリードと登録を続ける、 真の愛猫家(愛"オールドスタイル・シャム"家=OSSの育種繁殖家)が、残っていたのです。 それは、「育種」という考え方が長年培われた欧米ならではの、 特別に恵まれた環境だったと言えるでしょうし、 それだけOSS(オールドスタイル・シャム)に愛着を持っているブリーダーさんも多かったのでしょう。
 
  欧米のそのようなブリーダーさんたちの中には、一方的なスタンダード改変に対して、 異議・異論を唱えている方たちもいらっしゃいます。 彼らは現在も、それぞれの猫の団体への登録は続けながらも、現在のスタンダードには従わず、 ある種の使命感を持ってOSS(オールドスタイル・シャム)のブリードを行っています。 大方は、グループを作って協力しながら取り組んでいらっしゃいます。 また、3世代80年にもまたがって、OSS(オールドスタイル・シャム)をブリードし続けている、 老舗のお菓子屋さんのようなブリーダー(育種繁殖家)さんも数多くいらっしゃるのです。 かくして、欧米のOSS(オールドスタイル・シャム)たちは、絶滅を免れました。 そして、そのブリーダーさんたちを支えているのが、 ペットとしては絶大な人気を誇っているOSS(オールドスタイル・シャム)のオーナーたちでもあるのです。
 
  結局のところ、海外のシャム猫のブリーダーさんは、 改変後のスタンダードに則ってブリーディングを続ける方々と、 従来通りの昔のスタイルのシャム猫のブリードを続ける方々の、2方向に分かれることとなりました。 一方、日本では、そのような昔のスタイルのシャム猫のブリードを続けるブリーダーさんたちは、 公式にはほとんど現れていないと言えます。
 
  OSS(オールドスタイル・シャム)に限らず、 犬猫のどちらの場合でも、世界的にみて、本当にその品種を行く末を担っている「育種繁殖家」としての ブリーダーさんの数は、驚くほど少ないのが現状です。 現在目の前にいる犬や猫たちの存在そのものが、 彼らの努力と愛情と貢献の賜物なのです。 我々オーナー側としては、好みの品種の存続に真摯に努めていらっしゃるブリーダー(育種繁殖家)さんを 応援する、という意味でも、彼らの努力に見合った形で、そのペットたちを求め続ける、ということしか出来ません。 正当なブリーディングには、豊富な知識と経験、費用と時間、そして何よりも、 そのブリーダー(育種繁殖家)さん自身のその品種に対しての情熱、が必要とされるのです。
 
  裏を返せば、安易な繁殖や、選択的な品種改良、 あるいは、品種を固定する上で行われる過度の近親交配による代償は、 その内容に瑕疵があった場合、 何十年後かに、品種全体に及ぶ遺伝的な欠陥として、 それも既に取り除くことのできない形で発見されることがある、ということです。 このケースは、猫よりもブリーディングと品種改良の歴史が長いといわれる犬において、その弊害が顕著です。 例えば、コリーの85%が、 視覚障害や盲目を引き起こしうる遺伝子上の欠陥を持っていますし、 キャバリア・スパニエルの80〜90%が、 心筋梗塞や敗血症につながると見られる心臓弁の欠陥因子の影響下にあると言われています。 また、寿命も平均4〜5年くらいは縮まっているということです。
 
  現在、一部の猫種にも、既に骨格異常や神経症的な弊害も出始めていると言うことです。 「育種」の考え方を持っているブリーダーさんであれば、そのような犬や猫は「繁殖不可」とし、 健康上の好ましくない遺伝子が子孫に伝わっていかないようにするとのことです。
 
  さらに言えば、真剣にブリーディングに取り組んでいらっしゃるブリーダーさんたちは、 理想の外見の姿だけを追い求めるのではなく、 その血統書を遡って、遺伝的な欠陥や肉体的/性格的な弱点の克服、病気に罹りにくい血統の選別、 健康面を維持するために許される範囲内でのファウンデーション・ストック(基礎となる猫を登録して繁殖計画に取り入れること)の選択なども考慮に入れ、 繁殖に適切だと思われる猫を慎重に選び、手厚く世話をし、 心身ともに健康なその品種の存続をするべく、細心の注意を払ってブリーディングに臨んでいらっしゃいます。
 
  現代のブリーディングは、その姿だけでなく健康を最優先に追い求める方向に大きく転換する必要がある、 と考え始めた関係者も多いようです。 その品種の特徴と性格、同時に健康を追求したブリーディングには、 豊富な経験と知識が必要とされ、一朝一夕でできるものではないということは明らかです。 そのような意味においても、素人が安易にブリーディングに手を染めることは、 猫全体や品種にとって非常に危険なことである、と言わざるを得ません。
 
  余談ですが、初期のシャム猫は南国から来たせいか、非常に弱く、 なかなか繁殖に成功できなかったそうです。 また、現在でも時おり見られる、キンク(かぎ尻尾)や斜視なども、シャム猫特有のものでした。 当時のタイ国(シャム)では、キンク(かぎ尻尾)の猫の方が高価だったようですが、 欧米では好まれず、体質を頑丈にするとともに、これらの肉体的な欠陥(特質かもしれません) を取り除くために、当代のブリーダーさんたちが奮闘されたそうです。
 
  しかしながら、この考えに異論を唱えている方もおり、 作家でありシャム猫愛好家でもあった、Hettie Gray Baker さんは、著書の
"Your Siamese Cat"の中で、
 
  "もし、シャム(当時のタイ)のシャム猫がキンクで斜視であるならば、それこそが真のシャム猫なのでないか? 敢えて取り除くことはないのではないか? "
 
  と、疑問を呈しています。
 
  さらに、「斜視」について言えば、 「斜視」はシャムの血統の中に、少なくとも100年、またはそれ以上わたって存在して来ているそうで、 遺伝子学者たちは、シャム猫の血統から「斜視」がでる確率を完全に推定するのは不可能だと信じているとのことです。 何故ならば、「斜視」はシャム猫のカラーポイントのパターンと関係のある遺伝子へ 直接影響を与える部分の下方にあるからだ、という理由だそうです。
 
  今までの経緯から見ても、 「純血種」を健康に維持するということは、非常に困難なことだ、と言えます。 ペットの世界を、敢えて「雑種」と「純血種」に大きく2分するとするならば(命の重さは同じですが、あくまでも分類の一例として)、 遺伝的には「雑種」の方が圧倒的に強い立場なのです。 一度、確立した品種を存続させるためには、ブリーダー(育種繁殖家)さんたちの努力だけではなく、 そのようなブリーダーさんを支持し応援する、 オーナー側の正しい認識・理解と、永続性のある愛情・愛着もまた必要である、 と言うことができるでしょう。
 
  残念ながら日本では、依然として、商業ベースに則ったブリーディングの割合が多いといえます。 イギリス・アメリカなど欧米では、特定の品種に傾倒した、 それこそ熱狂的なファンとも言えるプロ意識を持ったブリーダー(育種繁殖家)さんが、 かなり多くいらっしゃるようです。 もちろん、育種繁殖家ではないブリーダーさんもいらっしゃるようですが、 日本に比べると「育種」という概念が、ブリーダーさんにもオーナーにも浸透しているようです。
 
  これには確かな理由があり、欧米では「牧畜」という文化を通して、品種の維持や保護や改良は 1人で行うことは不可能であり、協力して行うものである、という考え方が確立しているからだ、 ということが言えるのだそうです。 欧米では、数多くのブリーダーや牧畜業の人々が一致協力することが、 長い間に培われてきた文化なのだそうです。 日本でも農業の田植えや稲刈りなどでは協力する文化がありますが、 ブリーディングとなるとまだまだ歴史が浅いので、 「協力する」という考えに至っているブリーダーさんの数が少ないのかもしれません。 また、日本では、ペットに関する世界は、ペット産業・ペット業界として、 「商業ブリーディング」から入ってしまったという理由も挙げられるとのことです。 欧米に較べて、 「協力する」というより、「競争する」という感覚に陥り易い状況であるともいえます。
 
  話が逸れてしまいましたが、 一般に、 上記ような意味においてのブリーディングを「育種」と呼んでいます。 しかしながら、日本でも、ブリーダーさんやオーナーたちの考え方の変化も含めて、 徐々にそのような土壌が育ちつつありますので、 今後、ペットに対する意識がより成熟するにつれて、 育種繁殖家としてのブリーダーさんが増えてくることでしょう。 これからの日本の、OSS(オールドスタイル・シャム)の存続には、 単なる「増殖」ではなく、「育種」の志を持ったブリーダーさんとオーナーが求められることになるでしょう。
 
 
 
 
 
 


 
 

 
 


                     





     


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